多分、あなたと出会えたから、私は歩き続けることが出来たんだと思う。

苦しくて、悲しくて、どうすればいいのかわからなくて

『助けて』と口にすることすら出来なかった私に

あなたは手を差し伸べてくれた。

だから…これからも…

あなたの隣にいるのは私だといい、と思う。




あなたとまた…




。」

呼ばれて私は振り返った。

「周助。」

そこに立っていたのが、自分に一番近い人だと知って
私は思わず自分の顔がほころぶのを感じる。
向こうも気づいているんだろう、女の子もうらやむ外見を持つ彼はクスリと笑う。

「ここにいたんだ。」
「うん。」

私は言って、ふと目を上げる。
視線の先には艶やかに咲き誇る淡いピンク色の花があった。

「今年も綺麗に咲いたね。」
「そうね。」

言いながら私が木の幹に手をそっとやると、その上に周助の手が重なった。

「どうしたの?」
「うん、と会ったのも丁度こんな時だったなって。」

そういえば、と私はそっと目の前の桜の花を見ながら思う。

そう、あの時の私は今のように微笑んでいられることなど
まるっきり想像してなかったけど。

「ねえ、」

私は言った。

「どうしてあの時、私に声をかけたの?」
「だって、」

私の問いに周助は、困ったように、けど柔らかく笑った。

「泣いている人がいるってわかってて、放っておける訳、ないでしょ?」

ああ、だから私はこの人が好きだ。

「そういうこそ、どうして僕を信じてくれたの?」

周助に問われて私は、ふと目を伏せた。

「わかんない。ただ…」
「ただ?」
「今まで誰も私のことなんて気にかけてくれなかったから、嬉しかったんだと思う。凄く。」

周助は、それは光栄だね、と笑った。

「だって、周助がいなかったら、私…」
「ハイ、そこまで。」

私の言葉は周助に遮られた。

「それ以上は言わないで。『今頃、きっとここにはいなかった』なんて、
僕もう聞きたくないから。」
「周助…」

私はそっと振り返った。

。」

私と一番近い人は、幻想かと思わせるくらい綺麗な微笑を浮かべて言った。

「僕はずっと君の隣にいていいよね。」

聞かれるまでもない。

私は声に出さずに首を縦に振った。

「良かった。」

周助は心底安心したように言った。

「じゃあ、また君とこの桜、見れるんだね。」
「うん。」

今度は声に出して私は答える。
周助は満足げに肯く。

「それじゃ、そろそろ行こうか。ちょっと冷えてきたし。」

言って周助は重ねていた自分の手をすっとどけると、その手で私の手をとった。

「行くよ、。」

周助が私の手を引くので、私は素直にそれに従って一緒に歩き出す。

去り際に、私は一瞬だけ振り返った。

そろそろ薄暗くなってきた中、満開の桜は夢のように浮かび上がっている。

?」
「あ、御免。行こ。」

そうして私は周助に連れられてそこを立ち去った。

桜は風に揺られて、ほろほろと儚い花びらを私達に向けて零した。



…あなたの隣にいるのは私であればいいと思う。

今もこれからも

だから

あなたとまた

この桜を見れることを願おう…


The End


作者の後書き(戯言とも言う)

撃鉄シグ初のショートショートストーリーにして、乙女主人公であります。
いや、巷の乙女に比べるとまだまだだとは思いますが、これで精一杯(^_^;)

…でも桜ネタやるにはちょいと遅すぎでしたな。

書いてる間、慣れない故に凄く照れくさいことこの上なかったです。

それはともかく、この作品は『不二夢で乙女主人公』というリクエストをくださった嵐 ゆたか様に捧げます。
こんなもんでよろしければ、どうぞお受け取りください。

これを読んでくださった皆様も有り難う御座いましたm(__)m





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